殺人犯 対 殺人鬼 クローズドサークル
毎日一冊本を紹介している「けんぶち」さんのサイトで紹介されたミステリです。
何だそれええええ。このたったの一行で読むこと決定です。
作者は早坂吝さん。はやさかやぶさかと読むそうです。
はやさかりんだと思ってました。
ではあらすじと感想を。
あらすじ①剛龍寺翔、殺しに来たぞ。
舞台は孤島にある児童養護施設。ある夜、島の外に出た職員が嵐のために帰って来られなくなってしまいます。島の施設には子供たちだけが残された。
チャンスだ。網走一人は動き出します。殺害計画を実行に移すために。
殺すべき相手は、剛龍寺翔。暴力団組長の息子で施設の暴君。
午前4時、ゴム手袋とレインコートの姿で剛龍寺の部屋へ侵入します。
台所で用意した包丁を突き立ててやる!
ところが、
網走一人が殺さんと狙いを定めてきた男は、とっくに殺されていたのです。
網走一人が剛龍寺の部屋で目撃したのは、剛龍寺の死体だったのです。
学習机の回転椅子にパジャマ姿。そこに突き刺された果物ナイフ。複数の刺し傷。血溜まり。奇妙なのは・・・。
左目の部分におかれた金柑。犯人は剛龍寺の左目をくりぬき、そこに金柑を押し込んだ?
猟奇的すぎる。
殺害を計画した網走一人でしたが、他の奴に先を越されてしまったのです。
それは一体誰で、この猟奇の目的は何なのか。
それを追いながらも、自らの殺害計画も実行していこうとするのです。
あらすじ②きっかけ
網走一人は同じ施設の女の子と親しくなります。
五味朝美。彼女はいつも空き缶拾いをしています。集めて業者に売っています。
施設は18歳になると出て行かなければならない。その後のことを今から考えて蓄えをしているのです。彼女の夢はファッションデザイナー。デザイン帳を描きためています。
そんな健気な彼女を剛龍寺たち3人は「ゴミ漁り」とよんでいじめています。
五味朝美はその日常がいやになり、自殺を試みます。
止めにいく網走一人。結果。彼女は転落。
慌てて職員を呼びに行くのですが、そこで衝撃の事実。
五味朝美は「イツミアサミ」が正解でした。
剛龍寺たちが「ゴミ」とよんでいたので、自分もそう思い込んでいたのです。
五味はクルーザーで搬送されて意識不明の状態。
網走一人に怒りがこみ上げます。
絶対に許さない。剛龍寺たち3人の殺害を決意します。
繰り返す猟奇殺人
金柑だけではありません。
他にも黒ペンキをぶちまけられた死体。
トランペットをくわえた死体。
一体誰が、なんのために!?
この死体が意味するものは?
主人公の殺害計画はうまくいくのか。
そんな視点でお楽しみいただける作品です。
読んでみてください。
感想。ネタバレ注意報
未読の方は絶対に読んじゃ駄目!!!!!
自らの殺人計画を実行しつつも、自分よりも先に計画を実行していく殺人鬼を追っていく構造。ここがまずすばらしい。ダークヒーローの対決のようで楽しめました。
網走一人の視点で殺人鬼xとは誰なのかを追っていくのですが、
それがひっくり返る衝撃。殺人鬼のナイフが自分に向けられるかのようです。
提示された3つの猟奇的死体の謎には、実はしっかりとした理由があり、猟奇でもなんでもない鮮やかさ。
それだけでなく、3つの猟奇的死体はひとつの大きな謎を隠すために用意されていたんですね。
殺人鬼の殺人をする理由・・・・。
浮世離れした。ただ呆然してしまうような。なんとう奇妙さ。
そんな理由で殺すなんてと倫理の面から立腹する人もいるでしょう。
バカバカしいと立腹する人もいるでしょう。
でも、こういうの上質な遊びだとぼくは思います。