豪華クルーズ船の旅。突如海から出現した巨大な十字架。バチカン奇跡調査官12
「バチカン奇跡調査官」という小説をご存知でしょうか。
2007年12月の刊行いらい現在間で19巻が出ている人気シリーズです。
最新巻が15巻で(2019年7月現在)でそれに加えて短編集が4冊出ています。
累計100万分越えで、アニメ化もされています。
著者は藤木稟さん。
タイトル通り、バチカン市国の神父が世界中の信者から届けられる
「奇跡」についての真偽を調査するという話です。
主人公は2人。
平賀・ヨゼフ・庚(ひらが・よぜふ・こう)。日系アメリカ人の神父。
科学者。
ロベルト・ニコラス。イタリア人の神父。
古文書、暗号解読の達人。
つまり、理系と文系(暗号解読は数学が欠かせないことは知ってます。そうではなく
ロベルトは言語が堪能なのです。古典ラテン語、古典ギリシャ語、ヘブライ語などなど、様々な言語ができるのです)の専門家が両者の立場から奇跡について調査する。その融合がおもしろい作品です。
それを象徴するかのように、2人の仲は良好です。
優秀なのですが、仕事以外のこととなるとさっぱりで家事がまったくできない平賀。
一巻の冒頭で彼の家の様子が出てきます。
部屋にはやたらと無駄なものが多い。部屋の半分はガラクタで埋まっている。
そんな平賀をロベルトはかわいがり、よくご飯をつくってあげます。
ロベルトは神父と思えないほどに世慣れていて洒落者で美食家です。
その美意識からそうでないものに対して皮肉をいう。
それもこの小説の魅力の一つです。
友だちいらないよな、といつも思っているぼくですが、
この2人ならぜひ友だちになりたいと思います。
(彼らと友だちになるには、あまりにあまりに能力が欠けていますが)
その天才コンビが活躍する「バチカン奇跡調査官」の第12巻をご紹介。
中途半端やな~。
こういう場合第一巻かもしくは最新巻がふさわしいと思うのですが。
何故か。
それはぼくが今12巻を読んでいるからです。
これはぼくのブログですから、ぼくの都合です。
それにこの物語は各巻ごとに独立しているので、何巻から読んでもらってもかまいません。一巻から読まないと楽しめないなどということはありません。
(大枠は続いているので、そりゃ、一巻からずっと読むのがいいですけどね)
世界中から奇跡の調査依頼が来るので、巻ごとに舞台はアメリカ、ドイツ、ノルウェーなどに変わります。9巻では日本にも来ました。
さて、今回の舞台は「ハイチ」です。
ハイチ共和国(ハイチきょうわこく、ハイチ語: Repiblik d Ayiti、フランス語: République d'Haïti)、通称ハイチは、中央アメリカの西インド諸島の大アンティル諸島内のイスパニョーラ島西部に位置する共和制国家である。東にドミニカ共和国と国境を接し、カリブ海のウィンドワード海峡を隔てて北西にキューバが、ジャマイカ海峡を隔てて西にジャマイカが存在する。首都はポルトープランス。
1804年の独立はラテンアメリカ初、かつアメリカ大陸で二番目であり、世界初の黒人による共和制国家でもある。独立以来現在まで混乱が続いており、大規模災害と復興の遅れが混乱に拍車をかけている。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハイチのイメージって、中米?温かいところ?
ぐらいのイメージです。ぼくは。
そんな方にも親切にハイチの歴史についての説明も本書にはあります。
そして大きな出来事といえば、2010年1月12日に起きたマグニチュード7.0の
地震です。死者31万6千人ほどともいわれ甚大な被害がでました。
その地震で倒壊した大聖堂ノートルダム教会が復興される祝賀会に、枢機卿の代役として、ロベルトが選ばれたことから彼らのハイチ行きが決まります。
理由はロベルトがハイチクレオールを話せるから。
ハイチクレオールって?またわかんない言葉が出てきたよ。
ハイチ語(ハイチご、Kreyòl ayisyen:[kɣejɔl ajisjɛ̃])または ハイチ・クレオール語 は、中央アメリカ西インド諸島のハイチなどで使われるフランス語系のクレオール言語である。文字はラテン文字を使用する。英語でハイチクレオールと呼ばれることもある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
クレオール言語
クレオール言語(クレオールげんご、英: creole language)とは、意思疎通ができない異なる言語圏の間で交易を行う際、商人らなどの間で自然に作り上げられた言語(ピジン言語)が、その話者達の子供たちの世代で母語として話されるようになった言語を指す。公用語や共通語として使用されている国・地域もある。
また、日本語も北方系言語(アルタイ語族)と南方系言語(オーストロネシア語族)が混合したクレオール言語から変化したという説もある(日本語の起源を参照)。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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脱線しておりますが、ぼくたちが使う日本語にこんな説があるんですね。
話を戻しましょう。
要はロベルトが現地の言葉であいさつをするということです。
外国人スターが来日して「コニチハー」とかいうとこっちはうれしいと同じことですね。それが流暢だったら、驚きとともに大好きになってしまう。非常に親近感がわきますよね。
さらに、ロベルトたちの上司はこんなことをいいます。
「君たちには一週間の休暇を与える」
彼らが有給休暇をあまりとらないことを事務局から問い合わせがあり、私が部下を休ませていないのではといわれたと。
なんてことでしょう。休暇を与えないと上司が叱られるんですね。
しっかりと休暇をとるヨーロッパらしいですよね。対する日本はどうでしょう。
有給休暇をとることを悪であると考えている人がまだ存在していますよね。確実に。
ぼくの勤める会社では、有給休暇を申請すると嫌な顔をされます。どうして休むのかと理由を聞かれます。
日本という国で有給休暇を消化できる日が来るのは、いったいいつになるのでしょうか。休暇どころか、休憩すら悪だと思っている人もいる。時間など本人に自由に使わせればいいと思うのですが。
話を戻しましょう。
ロベルトと平賀は上司からハイチでの式典から一週間は出勤を禁止されます。
つまり、ハイチで休暇を過ごすことになるわけです。
で、無事式典を終えたのですが何をしていいやらと悩む2人。
「高級リゾートホテルでマリンスポーツに興じる僕らの姿なんて、想像し難いことは
認める」と自分でいっています。
そこに現れるのがルッジェリ。彼は業界3位のクルーズ会社の社長です。
彼の勧めでロベルトと平賀は豪華クルーズ船に乗ることとなるのです。
クルージングなんて羨ましい。
ブログ界ではかの有名な方がクルージングを楽しんだらしいですね。
本当に羨ましい。
それと比べてぼくのクルージング体験なんて。
1時間程度のクルージングができると聞いていってみたら、船が漁船だったのでやめたというお粗末なものです。
目の前にいたカップルも唖然としてましたが。そりゃ、そうでしょう。
これでクルージングって、あんまりやろ!
お魚獲りに行かんか~い。
安心してください。こちらは紛れもない豪華クルーズ船です。
全長300メートル、高さは60メートル、まるで水上に浮かぶ巨大マンション。
乗客3500名、乗務員2000名ほど。
こんなに乗る人どんなにお金持ちかしらーん。
設備も豪華も豪華で、シアタールーム、テニスコートにミニゴルフ場、
カジノ、プールと本当に船の中の話なのかと。
他にも様々な設備の説明に、豪華クルーズ船に乗った気分に浸ることができます。
さて、そうはいってもこの物語は『バチカン奇跡調査官』。
バチカン市国の神父が、「奇跡」についての真偽を調査するという話です。
通常は世界のどこかで「奇跡」と思われるような事柄があり、現地の人が調べて欲しいと依頼してくるのですが。今回の場合は。
船上でのパーティー。オーケストラの音とともに、シャンパンタワーにシャンパンが注ぎ入れられているとき、
海から大きな十字架が出現する。
その大きさ30メートル。
平賀とロベルトはその「奇跡」とも思える事柄を目撃する。
ロベルトが呆然としているうちにも平賀は
「船を止めて、海に潜れるか」とルッジェリに訊きます。
十字架は海から現れ、海へと消えた。ということは、現在は海の中にあるはず。
そう主張してダイバーを潜らせ、自分は海水をビニール袋に詰める。
海水を調べるためです。他にも掬い網で浮遊物を集める。
乗客から奇跡を記録した写真や動画を提出してもらうよう頼むのですが、3000近いデータが集まります。それを徹夜で見続ける。
これが平賀です。休暇なんて関係ない。調査したくて仕方がないのです。
普段の業務を忘れて休暇を楽しむはずだったのに・・・。
ロベルトは「主よ、どうかいつかまともな休暇がとれますように」と天を仰ぎます。
そのロベルトには、瘦せぎすの黒人青年が話を聞いてほしいとやって来ます。
「ぼくは呪われている」と。
神父であるロベルトを頼ったのですね。
今晩12時にチャペルでと約束して一旦別れて、ロベルトが約束の時間に行くのですが
その黒人青年は来ませんでした。
それどころか死体として発見されてしまいます。殺人事件です。
首に大きな傷。腹部は裂かれ、手足にも執拗な傷。
壁には血で書かれた幾何学模様があり、枕元には髑髏が置かれる。
ブードゥの死神ゲェデの印。
ブードゥー教(ブードゥーきょう、英: Voodoo、仏: Vaudou、海: Vodou)は、西アフリカのベナンやカリブ海の島国ハイチやアメリカ南部のニューオーリンズなどで信仰されている民間信仰。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ブードゥー教を知らない人でもゾンビはご存知でしょう。
ざっくりいえばそのゾンビをつくりだすのがブードゥーの秘術です。
余談ですがゾンビ作品といえば、『ウォーキング・デッド』なのでしょうか?
ぼくは一話でやめてしまいました。
ぼくにとってのゾンビ作品は『カメラを止めるな!』。
これはゾンビやホラーに興味なしという人でも見て欲しい作品です。
話を戻しましょう。
この殺されてしまった黒人青年なのですが、怪しいのです。
クリーニング店を経営しているのですが、それで大成功して豪華クルーズ船旅行かと思ったら、そうではない。仕事などしておらず、年中親戚に金の無心をしていた。
そんな人物が豪華クルーズ船に乗れるはずがないのです。
そこに現れるCIAのエージェント。
彼はテロ集団「ペテロの掟」を追ってこの船に乗っていた。
「ペテロの掟」とはトントン・マクートの残党。
ハイチの国人貧困層を主とした犯罪組織。時にはブードゥーの精霊に扮して刃物をふるい、死体を凄惨に見せる演出をすることもある。
殺されてしまった黒人青年の現場と共通します。
ならば、彼はこのテロ組織となんらかの関りがある人物なのでしょうか。
テロ組織はこの豪華クルーズ船で、テロ行為を計画しているのでしょうか。
再び起きる事件。
ハイチやブードゥーの歴史。
海から十字架が出現した謎。
おまけにバミューダトライアングルが関わってきた。
さあ、どうなる!?