バチカン奇跡調査官 今回の舞台はオランダ。聖遺物の奇跡。
今回は小説を紹介します。
このシリーズも今作で16弾です。
10周年を迎えるようですね。
ぼくはこのシリーズがとても好きで、ほぼ読んでいます。
このシリーズの内容といえば、タイトルにある通り。
バチカンの奇跡調査官が奇跡を調査するというものです。
世界中に存在するカソリックの信者13億人。その信者たちが奇跡を経験するとバチカンに報告して、「真の奇跡である」と認定してもらいたいと依頼します。
ところがその「奇跡」。本人たちの勘違い、思い込み。
ときには策略であるわけです。(本当の奇跡だと認定されれば、とても名誉なことであり、力を得ることができるからです。偽の奇跡をでっち上げるわけです)
そこで現地に赴き、調査官が調査する必要があるわけです。
一応ホラー文庫とされていますが、怖い内容ではありません。
奇跡という超常現象を扱っていますので、その分類になるのでしょうが、
解決法としてはミステリに近いですね。
(宗教がらみですので、実はその歴史には怖い部分があるものです。
そういう部分もエッセンスとしては入っています)
では、内容を見ていきましょう。
今回の舞台はオランダです。
オランダの歴史
物語はオランダの歴史から始まります。
国土はライン川、マース川、スヘルデ川という3本の大河が河口に作り出したデルタ地帯。人々は干潟や低湿地域にわずかな盛土をしてかろうじて生活をしていました。
11世紀、泥炭地の開拓。
12世紀、堤防の建築。堤防の内側の土地を干拓。
15世紀、その地に運河を掘って地面を乾かす。水を排出するポンプとして風車が用いられる。
長い間水と戦い続けたオランダ人は、
「世界は神がつくったが、オランダはオランダ人がつくった」と、胸を張るそうです。
かの有名な風車はオランダ人の誇りなのでしょうね。
足跡と聖遺物巡礼の儀式で起きた奇跡
オランダ・ユトレヒトの小さな教会。
ある朝、司祭はいつものように祈りを捧げます。
彼は祭壇のまわりに小さな足跡を見つけます。それは黄金色に輝いている。
鑑定家に調べさせると、それは間違いなく金。本物の金の足跡。
主が降り立ったのか???
奇跡はこれだけではありませんでした。
その教会には古くから「聖釘」が納められたと伝わる木箱が保管されています。
「聖釘」とは、キリストが磔にされた際、手足に打ち付けられた釘のことであり、聖遺物として崇敬の対象です。
他には聖十字架(磔にされたときの十字架)、聖槍(キリストの脇腹を刺したとされる槍)、聖骸布(その遺体を包んだとされる布)、聖杯(最後の晩餐に使われたとされる杯)などが聖遺物です。
そんなありがたい、聖遺物巡礼の儀式は復活祭とクリスマスに次ぐ人気の儀式。
普段は礼拝をさぼりがちな信者も、一般人も教会に集まってきます。
午前零時近くになっても訪問者は続きます。
そこで停電が起きます。
真っ暗闇の中で白く輝く3つの球体。その光は虹色の色彩を浮かべながら舞い上がり、その中で司祭は神の御声を聞いたのです。
司祭だけではありません。神父も、それ以外の人も同じようなことを経験していたのです。その数40余名。
これは奇跡。
バチカン奇跡調査官の出番です。
平賀(日本人神父)とロベルト(イタリア人神父)のコンビはオランダへ向かいます。
王の中の王
奇跡を起こしたとされる木箱には「王の中の王」と刻まれています。
これはキリストを示す言葉。この中に聖釘は入っている。
しかし、木箱は開けてはならないと伝えれれています。
いかにバチカンの調査官といえども従わなければなりません。
箱を開けて実際にそれを確認することは不可能です。
科学者である平賀はx線での調査を申し出ます。
果たして本物の「聖釘」でしょか???
たくさんの証言
司祭 キリストの御姿と御声を聞いた。
神父 体が浮き上がり、天使の姿を見た。
60代の夫婦とその娘 天使のコーラスを聴いた。
50代男性 80代の老人 認知症で会話ができなくなったが、あのときは会話が成立した。
誰もが光を見て、奇跡と思うような体験を語ります。
やがて、平賀は光の正体をつきとめ、とんでもない実験をするのですが・・・。
教会の記録
奇跡に対して科学的なアプローチをする平賀に対して、古文書と暗号解読のエキスパートであるロベルトは教会の古い記録を調査します。
奇跡に対していわゆる「理系」と「文系」の両方からアプローチするわけです。
その中で、例の木箱「王の中の王」が教会に来た経緯がある富豪商人であることをつきとめます。
その人物とは何者なのでしょうか???
2人が突き止めた真相は。
是非読んでみてください。
おまけのミッフィー
エピローグには絵本で有名なかわいいうさぎのミッフィーが登場します。
2人でミッフィー博物館へ行きます。
ミッフィーの作者であるディック・ブルーナはオランダのユトレヒトの出身なんですね。
オランダねたをもう一つといったところでしょうが、
2人の信頼感をしめすいいエピソードとして物語を閉じています。
ミッフィーの本当の名前はナインチェ。うさぎを意味するオランダ語に、小さく愛らしいものを示す「チェ」を付け足したものです。
英語版の出版の際に「ミッフィー」という名が新たにつけられたそうです。
日本では「うさこちゃん」ともよばれますが、それは正しい訳なのです。
余談ですが、
ぼくはこの「ミッフィー」は非常にすぐれたデザインであると思っています。
余計なものをすべて削ぎ落とした簡潔さ。研ぎ澄まされた線がなせる技です。
「かわいい」を超えたすばらしい存在です。
ぼくはもういい年のおっさんですが、
ミッフィーのすばらしさは子供だけのものではないと思っています。
でわ。