アリス・ザ・ワンダー・キラー 早坂吝
今回は小説を紹介します。
『アリス・ザ・ワンダー・キラー 少女探偵殺人事件』です。
作者は早坂吝さんです。
題名からなんとなく察する物があると思いますが、その通りです。
この物語は、あの有名な『不思議の国のアリス』をモチーフにしています。
『不思議の国のアリス』といえば、白うさぎ、ハートの女王、トランプ兵、
ハンプティ・ダンプティという卵などが登場する話。
ぼくは一度原作を読んでみようとしましたが、訳がわからず挫折しました。
その謎ばかりの『不思議の国のアリス』。作者のルイス・キャロルは数学者だそうで、
ナンセンスな中にも論理性が光る作品らしいのです。だからこそ謎解き好きにはたまらない。同じように考える推理作家は多く、『アリス』を題材にした推理小説は昔からたくさんあるそうです。
早坂吝さんもその一人で、今回はそれに挑戦したということでしょう。
- はじまり
- 第一の謎 部屋から脱出せよ
- 第二の謎 消えた子ブタを探せ
- 第三の謎 カラスと書き物机の謎を解け
- 第四の謎 ハンプティ・ダンプティの死の真相を解け
- 第五の謎 白うさぎを捕まえろ
- 感想・ネタバレ注意報
はじまり
アリスはその日10歳の誕生日を迎えました。
将来の夢はお父様のような名探偵になることです。
そのための手ほどきをいつも父からも受けています。
ところが母親は猛反対。
探偵なんていう仕事は、収入が不安定でおまけに危険。
「今からしっかり勉強して私のような堅い職業につきなさい」
と誕生日プレゼントに分厚い参考書を5冊もよこす始末です。
それと比べて父は、アリスに極上の謎をプレゼントするのです。
それはバーチャルリアリティ。
『不思議の国のアリス』をアレンジした電子空間で、
謎解きゲームをプレイすることになります。
父の友人であるイーグレットという男に導かれ、
アリスはゲームの世界へと入り込んでいきます。
第一の謎 部屋から脱出せよ
部屋には鍵がかかっています。
部屋のテーブルには「体を大きくするクッキー」と「体を小さくするシロップ」がおかれています。これは何度でも補充可能です。
隣の部屋のテーブルには、こちらの部屋の鍵があります。
2つの部屋をつなぐ通路はとても狭く、おまけに「体を小さくするシロップ」を乾燥させてしまいます。
アリスは正解にたどり着くことができるでしょうか?
第二の謎 消えた子ブタを探せ
アリスはコショウまみれの家に行きます。
そこに住む公爵夫人は子供を抱いていますが、実は子ブタ。
公爵婦人は自分の子供の死が受け入れられずに、子ブタを我が子と思い込んでいます。
その子ブタが姿を消した。
アリスは真相を暴き出すことができるでしょうか?
第三の謎 カラスと書き物机の謎を解け
帽子屋が店の奥の隠し部屋で謎解き愛好会を開催しました。
アリスはその会に参加するのですが、その会の後で帽子屋が殺されます。
床に残るダイイング・メッセージ。
RAVEN(カラス)と DESK(机)。
これが意味するものとは?
アリスはダイイング・メッセージに込められた意味をつかみとることができるでしょうか?
第四の謎 ハンプティ・ダンプティの死の真相を解け
塀の上に腰掛けているハンプティ・ダンプティという卵がいます。
落下したときはすぐに救助兵を呼べるように見張るトランプ兵。
ところが、その最中にハンプティ・ダンプティは姿を消し、行ってみると割れてしまっていました。
一体何があったのでしょうか。
アリスは正解を導き出すことができるでしょうか?
第五の謎 白うさぎを捕まえろ
ハンプティ・ダンプティを守ることができなかったトランプ兵は裁判にかけられるために城へと行きます。
アリスも一緒に向かいます。
そこで提示されるのは、「制限時間内に白うさぎを捕まえろ」
ところが、アリスは閉じ込められてしまいます。
アリスは脱出し、白うさぎを捕まえることができるでしょうか?
『不思議の国のアリス』を途中で挫折したぼくでしたが、十分に楽しめました。
でも、読んだことがある人の方がより楽しめるのではないでしょうか。
感想・ネタバレ注意報
ここからさきは、ネタバレしておりますので、
お読みになる予定の方は絶対に読まないでください。
第一の謎には別解があり、そこに大きな真相が隠されているなんて。
そして、すべての謎には、共通点があるだなんて。
真相のひとつには、早坂吝さんらしい味付けがなされています。そう来なくっちゃ。
(全問不正解のぼくでしたが、実はこれだけは見破れました)
早坂作品はこれで3作読んだことになりますが、
この作品はお子様にも安心して読ませることができる内容ではないかと感じました。
主人公は10歳の女の子ですしね。