toohiiのお一人様がいい

1人が好きな男がいろいろと吐露します。

蜂蜜と遠雷  豊かさを感じさせる小説です。まだ読んでる途中ですが・・・。

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恩田陸さんの『蜂蜜と遠雷』を今読んでいます。

直木賞本屋大賞のW受賞の作品で、帯には累計149.7万部突破と書いてあります。

売れに売れている名作ということでしょうか。

読み始めて納得です。ものすごくいいですね!!!

 

とてもいいのでゆっくりと読んでいます 

恩田陸さんはまあまあ好きな作家さんでした。

デビュー作の『六番目の小夜子』をはじめ、10冊程度は読んだでしょうか。

ぼくとして恩田作品で一番好きなのは『3月は深き紅の淵を』です。

これは「読書」をテーマにした4本の短編集です。

これから「理瀬シリーズ」といわれるものがはじまるのですが、

それについては読みました。

感想としては、読んだけどよくわからなかった、というロクでもないものです。

雰囲気はとても好きなのだけれど、ぼく自身が理解できていないといったところでしょうか。

だから、実のところ恩田陸さんは数年ぶりでした。

 

ぼくが小説を読む際には予備知識はあまり入れないように心がけます。

ですから、今回もピアノコンクールの話だよ ということ以外は一切知らずに読み始めました。

 

読み始めてすぐにこれはいいと感じました。

ぼくがいい小説と出会ったときのパターンは2つ。

とにかく結末が知りたくてできるだけ早く読む。

通常はこっちです。

でも、むしろ逆の行動に出ることがたまにあります。

取りこぼしなくするかのように丁寧に読むのです。

これはあまりありません。

ですが、今回はこのパターンが出ました。

実に数年ぶりのことでした。

村上春樹さんの「1Q84」以来だと思います。

 

結末は知りたい。当然に知りたいのですが。

ひとつのシーンや、一文をしっかり味わいたい気持ちになっています。

時折止まってはいろいろと考えてしまっています。

だからぜんぜん進みません。

上下巻あるのですが、まだ上巻を読み終えておりません。

でも記事で紹介はしたい。

 

そこで今回は、一日で読み進んだ分だけを紹介し、そこでぼくが感じたことを書いていく形式にしますね。

 

前置きが長えええんだよ。

 

 

1月19日 音楽業界の厳しい現状を知る

物語はプロローグを終えて、パリからはじまります。

ピアノコンクールのオーディションが行われています。

そこで審査員の三枝子は退屈しています。

それは彼女たちが探しているのが「スター」であり、

「ピアノが上手な若者」ではないからです。

 

コンクールというと優雅な「発表会」のイメージがあったのですが、

そうではなく、

「次世代を担う才能」を発掘する場であることがわかります。

 

必死で有望な新人を探しているのです。

 

ここで三枝子の友人のミステリ作家を登場させて、2つの業界の共通点を語られます。

どちらも斜陽産業で、読む人聴く人の数はジリ貧。

一見優雅に見えるが、地味にこもって何時間もこもって練習して原稿を書いて。

続けていくのが難しい世界。新人を常に見つけていないと担い手が減ってしまう。

だから常に新たなスターを求めている。

 

作者がピアノの世界を書く気になったのは、このような事情があるからでしょうか。

 

続く退屈な演奏。

登場する子は誰もが幼い頃からレッスンを受け、お金も時間もかかっていて、技術は高いのですが・・・。

そこに、

風間塵が登場します。

ユウジ・フォン=ホフマンの推薦状を持って。

 

このユウジ・フォン=ホフマンこそは世界中の音楽家が尊敬する人物。

すでに他界してしまっているが、その推薦状の威力は絶大。

そこには「ギフト」と書かれていた。

 

その「ギフト」はとんでもない演奏をしてみせて審査員たちを驚かせます。

求めていたスターをついに見つけたと喜ぶ審査員たち。

ですが、三枝子は拒絶します。

 

賛美と拒絶で真っ二つ。

それが風間塵。

 

音楽業界の厳しさ。それを支えているコストの膨大さ。

そこに現れる少年。

その名の通り、風のごとくやってきて、塵が舞うかのようにいなくなるのです。

彼は業界の常識からしてあり得ない。(それが物語を通して少しずつわかってくるのですが)

そのあり得なさは音楽業界のコストを考えれば苛立ちに変わる。

その苛立ちの象徴が三枝子。

 

風間塵を中心に大きく動き出すのだろうな、ということを感じさせて物語ははじまります。

 

1月20日 登場人物たちにわくわくする

 

この物語はピアノコンクールをテーマにしています。

コンクールとは競技会のことなんですね。

出来栄えの優劣をつけるものです。

 

スポーツの競技会と何ら変わることのない競い合いの場なのです。

 

颯爽と登場した風間塵の前に立ちはだかるライバルたちが登場します。

 

「帰ってきた天才少女 栄伝亜夜」 かつて天才少女としてデビューしながら、母親の死をきっかけに気力を失いコンサートから逃げ出し、業界から消えた。20歳。

 

「サラリーマン 高島明石」 コンクールの世界では28歳でも最年長。彼には訴えたいものがあります。音楽を生業とする、つまりプロの演奏家だけが尊敬に値するのかと。

生活者の音楽。サラリーマンをしながら音楽をしている者の音楽は劣っているのかと。

 

「優勝候補 マサル・カルロス」 精悍なのに、静か。野性的なのに、思慮深い。すでにスターのたたずまい。マサルの名のごとく勝利を手にするためにここにいる19歳。コンクールの構造としては、彼が中心であり、彼にどう対抗するのかなのです。

 

とても興味深い対戦相手ですよね。

 

栄伝亜夜のところで、またもや音楽業界の厳しさが書かれます。

二十歳過ぎればただの人。

世界では次々と天才少女・天才少年が湧いてくる。しかし、誰もが大成するわけではないと。

野球の世界でも「10年に一人の逸材」といわれる選手が毎年登場しているような気がします。10年に一人のはずが、何で毎年出てくるのかといつも疑問に思っていたのです。「才能はあるのだが・・・。」というケースが実は意外と多いということでしょうか。

 

1月21日 風間塵少年は楽しい

 

コンクールで着るための衣装選びで疲れた亜夜はピアノが弾きたくなり大学へと行きます。

夜はとっくに更けています。でも、大学の練習室は基本24時間使用が可能です。

つまりはそれくらい練習しなけらばならないということなのですが。

練習室は当然防音。

それでも漏れ聞こえてくる音の中で、ある練習室から聞こえるピアノに亜夜は足を止めます。

音が大きい。扉を突き破って来るような太い輪郭。

その音の主は、音大生の亜夜からしてとんでもない演奏を次々とやってのけます。

ぼくは知識がありませんので、やっていることがどういうことなのかはっきりとはわかりません。ですが、なんだか楽しそうだということが亜夜の驚きとともに伝わってきます。ピアノで遊んでいるかのようです。

その人物こそが風間塵。大学の生徒ではありません。

亜夜に見つかると、逃げていってしまいました。

またも塵のごとく消えたのです。

 

読むほどに豊かさを感じさせます 

才能はありながらも大成する者は少ない厳しさ。

プロになってもピアニストとして食べていけるのはほんの一握り。教師としての収入で生活するもののほうが多い。

そもそも楽器を続けることさえも苦労をさせられる。

楽器そのものの置き場所もなければ、

音を出さざるをえないために練習する場所もない。

 

音楽業界とてビジネスの世界。

しかも、コンクールというのは今や地域ぐるみの一大産業。

それに出場し、勝ち抜く意義。

師匠は弟子に勝たせたい。

 

それぞれの思惑。迷い。その中には嫉妬心もあって。

 

損得勘定や、負の感情。

決して華やかだけではない厳しさもたっぷりと書かれています。

 

それでも、ピアノの旋律がそれらを大きく包みこんで、

一文読むたびに豊かな気持ちにさせてくれます。

 

 

 次回またこの続きをやりますね。

ホイじゃ、また。