toohiiのお一人様がいい

1人が好きな男がいろいろと吐露します。

百人一首を全部暗記していることなんて普通でしょ、と思った小4の男の子からはじまる話

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以前に紹介した小説『蜂蜜と遠雷』を読んで以来

恩田陸さんの作品をもっと読んでみたいという気持ちになっています。

 

そこで少しだけ調べていくつかのサイトを見つけました。

以下のサイトが自分としてはわかりやすかったですね。

ranking.goo.ne.jp

で、このサイトで見事人気ランキング1位を獲得しました作品を読むことにしました。

 

『常野物語 光の帝国』です。

 

ざっくりといってしまえば超能力ものですね。

膨大な書物を暗記する

遠くの出来事を知る

近い未来を見通す

「常野」という場所から来たといわれている不思議な力をもった人々の話です。

 

少年ジャンプを読んで育ちましたのでこれ系は大好きなんです。

 

ワンピース、hunter x hunter、ジョジョの奇妙な冒険などなど。

これらは能力バトルものですが、

「常野物語」はそれとはテイストが違いますね。

 

もう少し、静かで穏やか。

日常の風景にちょこっとそんな不思議な力をもった人が登場するような感じ。

 

あとがきにこうあります。

「子供の頃に読んだお気に入りのSFに、ゼナ・ヘンダースンの「ピープル」シリーズというのがあった。宇宙旅行中に地球に漂着し、高度な知性と能力を隠してひっそりと田舎に暮らす人々を、そこに赴任してきた女性教師の目から描くという短編連作で、穏やかな品のいいタッチが印象に残っていた。

 ああいう話を書こう・・・。」

 

 なるほど。納得です。

『常野物語 光の帝国』は女性教師の視点から書かれるわけではありませんが、

彼らを外からうかがうように描く距離感みたいなものがとても心地よい作品ですね。

 

10本の短編集です。

 

ではそれぞれさわりをご紹介。

 

春田一家

この記事のタイトルにもしました、百人一首の件。百人一首を全部覚えているってすごいですよね。自慢できます。どうやって覚えるかということを中学の授業で先生が話していたことを思い出しました。

 

それを小4でやってしまったクラスメートがいたらそれはそれは驚くでしょう。

でも春田光紀はきょとんとしている。

そんなの当たり前でしょ。みんなそれくらいできるでしょ・・・。

 

なんとこの少年、百人一首どころか江戸時代までの日本の古典をすべて覚えているというのです。さらに驚くことに彼の家ではそれが当たり前。

 

そんなとんでもない記憶力を持った家族の話です。

 

「常野」の人たちとはこんな人達ですよと紹介するにふさわしい冒頭の一本です。

 

妻との奇妙なれそめ

奥様とのなれそめは、と訊かれたとき「茶碗が割れたせいです」と答える男。

なんでそんなことが・・・???

 

春田一家とはまた違う能力の「常野」の人が登場します。

その能力があるからこそ、そういうことになるわけです。

 

神隠しの山

2人の男が山道を歩いていきます。2人は高校時代からの友人の間柄です。

その片方の泰彦はかつて自分の父親とこの山を歩いたそうです。

父親というのが「お役人」のシールが貼ってあるのではと思うほどの、味も素っ気もない堅い男だった。

その父の遺品に何度も読み返された歌集や詩集が出てきたときにはとても意外に思った。もっと意外なことに、父の日記や手紙の中に何度も「常野」という字を見た。

父がおじいさんから聞いたという不思議な力を持っているといわれた人々の話を思い出す。

父は晩年、常野と呼ばれる一族のことを本気で調べていたふしがある。

堅物の父がそのようなことを?

 

さらに、かつて父親とこの山を歩いたときに聞いた話をしはじめます。

それは父が学生時代の親友とこの山を歩いたときに経験した話。

今の泰彦と同じように。

「人生の転機にある人間がこの山に登ると、その人にとって重要な場面が目の前に現れる」

 

父はその時何を見て、泰彦はこれから何を見るのか・・・。

 

できる女

暎子というできる女性社員の日常。男だったらとっくに部長。

彼女には娘がいて。ふたり暮らし。

夫は失踪。

能力バトルの感じがありますね。

 

前略

手紙形式で物語が進行します。上に書いた泰彦の父親の手紙の内容がここで明かされます。このようにこの短編集は一つ一つ独立した物語ですが、少しずつつながっています。

 

光の帝国

表題作です。ですから、この短編集の中でも特に作者が推す物語ということでしょうか。

受け止め方は人それぞれですけどね。

 

継続は力なり

冒頭の物語で、中学1年だった記実子が高校生として登場します。

そこでの台詞。

「ずうっと続けなくちゃ。いろいろ試して、試して、試し続けなくちゃ。ちょっとやってみただけで、いったい何がわかるっていうの?みんなで長い長い時間の先を目指して、ずっと歩き続けなくちゃいけないの。でないとあたしがここにいる意味ないもの」

 

ビルの壁の清掃

登場人物がいいます。

不思議に思わない?何であんなにひっきりなしにビルの壁の清掃をしているのか。

 

たまに見かける光景にはそんな意味があったのです。

 

繰り返し見る夢

どうしよう、今夜もまたあの夢を見るのだろうか。

ここ一ヶ月毎日見ている嫌な夢。

記実子の高校時代の同級生である、亜希子が社会人となって再登場します。

 

世界中から一族が集まるパーティ

田舎の道を2人の男女が歩いていきます。

パーティで演奏することを依頼されてのです。

2人はクラシックの演奏家です。

 

音楽のことをもうとっくに書いていたんですね。

 

 

 

 能力もそうですが、話ごとにテイストも様々で、

「常野」で貫かれた10種類の串ダンゴのような短編集です。

ぜひお楽しみください。

 

 

ホイじゃ、また。