不穏な眠り 葉村晶の短編集 読書初心者にもオススメ。
本日は小説の紹介をします。
『不穏な眠り』若竹七海著です。
人気の葉村晶(はむらあきら)シリーズ。
2020年1月にはシシドカフカさん主演でドラマ化されました。
個人的には葉村晶のイメージは吉田羊さんだったのですが。
葉村晶は女性で、ミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>のアルバイト店員にして、その本屋が副業ではじめた<白熊探偵社>の唯一の調査員です。
世界で最も不運な探偵らしいですよ。
薄い薄い短編集です。253ページしかありません。
そこに4本の短編が収録されていますので、単純に計算して1本63ページ程度です。
ぼくはもっとみんなに小説を読んで欲しいなと思っていますので、
余り読み慣れていない人はこれくらいのものから読んでみるといいのではと思います。
それでは内容を見ていきましょう。
1本目・水沫隠れの日々
みなわがくれと読むみたいですね。
今回の依頼人は藤本サツキ。
ボリス・ヴィアン風に表現すると、肺に睡蓮の花が咲いて、あと半年の余命宣告をされちゃいましたの。若いころに買い集めた本を買いとって欲しい。
ボリス・ヴィアンて誰じゃい。睡蓮とくればモネしか知らんわい
依頼人はその辺のことにお詳しい上品で知性のあるお方です。
彼女は友人と会社を興した。でもその友人がすぐに死んでしまった。
遥香という娘を残して。
その子を引き取って我が子として育てたものの、その子は素行が悪くて、
数年前に縁を切ったのです。
でも、今思うことは。
「来週あの子が帰って来る。迎えに行って私のもとへ連れて来て」
葉村晶は依頼を引き受けます。
2本目・新春のラビリンス
除夜の鐘で物語ははじまります。
<東都総合リサーチ>の桜井からの依頼で、大晦日の夜にあるビルの警備につくことになるんです。
そのビルとは解体直前の廃ビルだが、実はこのビル 出る👻
呪いの幽霊ビルとして心霊マニアの間では有名らしい。
見物客がやってきては動画をネットにアップ、それでさらに有名になって。
所轄署の重点パトロールの対象にまでなってしまった。
昨日もビルに入り込んだ奴らがいたらしいが、それを手助けしたのが何と警備員。
当然クライアントに叱られて、あろうことか逃げてしまいます。
そのせいで人手が足りなくなり、葉村晶に警備の仕事が回ってきたというわけです。
警備は無事に終わります。
ところがすぐに別の依頼が入ります。警備会社の事務員である女性からです。
逃げた警備員を探して欲しい。2人は交際中のようです。
葉村晶は依頼を引き受けます。
3本目・逃げだした時刻表
なんと、葉村晶が倒れています。
彼女が店員として勤めるミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>の店内で。
一体何があったのでしょうか。
大丈夫ですか、葉村さん。
まあ、読者は慣れっこですね。
なんといっても彼女は世界で最も不運な探偵なんですから。
怪我なんてしょっちゅうです。
どうしてこうなった?
ミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>のイベントで
今回は<鉄道ミステリ・フェア>を開催することになります。
その目玉として登場するのが、古い洋書。
アガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』に登場するイギリスの鉄道時刻表として、
ミステリファンにはお馴染みのものらしいのですが。
それには丸い穴が開き、本自体が歪んでいる。そんな本に古本としての価値はないのですが、実はそれはいわくつきのやつで。
それを巡ってのひと騒動が、葉村晶が倒れた理由です。
何があった?
4本目・不穏な眠り
表題作なのでこれが作者イチオシなのでしょうか。
ミステリ専門書店<MURDER BEAR BOOKSHOP>のお得意さんである鈴木品子から、
葉村晶に直接調査の依頼がされます。
なんと美しく、久しぶりに聞く響きであることか。(葉村晶の言葉より)
品子はとても気になっていることがあるといって話はじめます。
12年前の事、品子は従妹の死を知ります。
従妹には身寄りがなく遺骨と家を引き取ることになりました。
その家は手入れがされておらず、その手入れを便利屋に依頼します。
便利屋はその家を倉庫兼事務所として使いたいので貸して欲しいという。
便利屋の仕事ぶりに好感をもった品子は家を貸すのですが、
実は便利屋はその家に原田宏香という女を住まわせているということが発覚します。
その女が死体として発見され、警察を呼ぶ事態となりました。
鑑識が入り、警察からそれなりの返事をもらい、一応の解決はしたのだが。
品子は気になってしまう。
原田宏香のことが。
彼女のことを調べて欲しい。
葉村晶は依頼を引き受けます。
調査を進める中で、葉村晶はまたとんでもない目に遭ってしまうのですが。
葉村晶の活躍には何故か笑いがついてくる。
こんなひどい目にあっても仕事を遂行する優秀な人なのに、
800円の春菊のてんぷらそばを自分のご褒美にするのがせいぜいなんです。
(ちなみにぼくのきのうのお昼は200円だ。800円なら御馳走だ。わかるわー)
悲惨な目にあっているのに何故か笑ってしまう。
そんな葉村晶の活躍をご堪能ください。